鹿児島湾は別名「錦江湾」とも呼ばれます。しかし、錦江湾という正式な地名は実はありません。正式名称は「鹿児島湾」であり、地図上でもこの表記上でもこの名称が用いられています。
錦江湾という呼び名は、島津氏第18代の島津家久が詠んだ「浪のおりかくる錦は磯山の梢にさらす花の色かな」という歌が由来と言われています。後に、加治木島津氏代6代久微(ひさなる)がこの地に「家久公の歌にちなみ、前の海を錦江と呼ぶ」という趣旨の文を刻んだ碑を建立しています。
錦江湾ブルー計画によると、指宿市開聞町開聞崎と肝属郡南大隅町佐多岬を結ぶ線および陸域により囲まれた海域を鹿児島湾と定義されています。鹿児島湾は南北約80km、東西約20kmの細長く入り込んだ内湾で、桜島以北の湾奥と南部の湾央、湾入口の湾口部に分けられます。
鹿児島湾全体の表面積は1130平方kmになり、エリア別にみると、湾奥部が250平方km、湾央部が580平方km、湾口部が300平方kmあります。
鹿児島湾全体の容積は1300億立方mになり、エリア別にみると、湾奥部が340億立方m、湾央部が730億立方m、湾口部が230億立方mあります。
鹿児島湾の平均水深は、湾奥部が140m、湾央部が126m、湾口部が80mあります。湾全体の平均水深は117mです。最大水深は湾奥部で206m、湾奥部で237mあります。
鹿児島湾はすり鉢を2つつないだような形をしています。このため、外洋との海水の交換が悪く、特に湾奥部の海水の交換が悪いと言われています。内湾でありながら、ここまでの深さを有する海は世界的にも珍しく、世界中から研究者が訪れています。特に、湾の底層には「たぎり」と呼ばれる火山性ガスの吹き出る場所があり、その場所にしか棲まない生き物もいます。
鹿児島湾の中だけで生息する大型の海洋哺乳類がいることも、大きな特徴の一つです。現在300頭近くのイルカがいると言われています。(2009年12月現在)
鹿児島湾は、新生代(今から6500万年前~現在)の第3紀末から第4紀にかけて霧島、桜島、開聞岳等が長期にわたって噴火。姶良、阿多の両カルデラとその中間部に広大な陥没地を形成し、ここに海水が浸入して出来ました。大正3年(1914年)1月の大噴火による溶岩が流れ出し、現在のように桜島が大隅半島と陸続きになっています。
鹿児島湾は、本土の特殊な形により大隅半島から黒潮の一部が流れ込んでいます。そのため、内湾でありながら多様な生物相を有しています。この黒潮の流れの多くは桜島の南方で渦を描くように対流しますが、一部は湾奥まで流れ込みます。黒潮の流れは、他の海に比べて水温が高く生き物が生息しやすい流れです。
鹿児島、指宿、牧ノ原の年平均気温は14~20℃の範囲です。いずれの地点も上昇傾向にあり、昭和50年代に比べると約1℃上昇しています。最高、最低気温についても上昇傾向にあります。
鹿児島や指宿の年降雨量は約2000~2500mmとなっています。
鹿児島湾の海岸線の状況は、純自然海岸が41%、半自然海岸が20%、人工海岸が38%となっています。全国平均(純自然海岸55%、半自然海岸が14%、人工海岸が30%)と比べた場合、純自然海岸がやや少なく、半自然海岸、人工海岸がやや多くなっています。
1.純自然海岸:海岸汀線及びそれに接する海域が人工的に改変されないで自然状態を保持している海岸
2.半自然海岸;道路や護岸等で海岸汀線が人工的に改変されているが、汀線に接する海域は自然状態を保保持している海岸
3.人工海岸:港湾、埋立等の土木工事により海岸汀線及びそれに接する海域が著しく人工的に改変された海岸
鹿児島湾域の一部は、霧島屋久国立公園、県立自然公園等になっています。
鹿児島湾にはイルカも生息し、深海には火山性のチューブワーム「サツマハオリムシ」まで見られます。また、海岸線では干潟や磯も見られ、そこにしか生息できない生き物も多数見られます。(詳しくは「生き物図鑑」を見てくださいね)
湾奥部ではブリが、湾口部ではカンパチが養殖されています。ともに国内有数の産地となっており、北米などの海外にも広く輸出されています。
「干潟」とは、海の干満によってあらわれる砂や泥で形成された、広い土地のことをいいます。6時間おきに起こる満潮と干潮によって、陸地が現れたり海に沈んだりする、とても特殊な場所です。鹿児島湾のような元火山の海には、海岸線に「干潟」ができにくいという特徴があります。海底がすり鉢状になっているため、遠浅になりにくいのです。
「干潟」には、その場所にしか棲まない多種多様な生物たちがいます。カニやエビ、二枚貝に巻貝、ゴカイやナマコなどです。これらの生き物たちは、「干潟」という特殊な場所に住み、彼らにしかできないとても重要な役割を担っているのです。
干潟ができにくい鹿児島湾ですが、湾奥の思川や別府川、天降川などの河口には約150haの干潟が残っています。鹿児島湾内、特に湾奥の生態系は、この数少ない「干潟」にいる生き物たちが一手に担っています。
他湾等では湾岸に近接した1,000m級の山はほとんど存在しないのに対し、錦江湾においては、桜島や開聞岳等の特徴的な山を、錦江湾からそそり立つように多くの場所から眺めることができます。特に桜島の場合、55万都市である鹿児島市の前面に位置し、かつ活火山という日々異なった表情を見せる山であることが、雄大な自然を持つ錦江湾のイメージをより引き立たせていると言えます。
また、他湾の水深は最大でも100m程度ですが、錦江湾は200m以上と水深の深い湾であり、豊かな水産資源に恵まれた漁場としての価値を有しているほか、釣り等のレクリエーション資源としての魅力を持っています。
閉鎖性内湾の特徴として水域の静穏性があげられますが、それらの中でも、錦江湾のように広大な静穏水域を有する湾は、我が国にはそれほど多くはありません。さらに、東京湾、伊勢湾、大阪湾の三大湾と比較しても50cm以上の波高の出現率が比較的低く、レクリエーション等の活用可能性の面から、大きな魅力としてとらえることができます。
湾内の海岸線は、磯浜、砂浜、干潟、断崖そして溶岩など多様性に富んだ個性的な形状を呈しているほか、湾内には、小さな島々も点在しており、特徴のある海岸景観が見られる点を魅力としてとらえることができます。
湾内においては、自然保護上重要かつ貴重な植物や、水生生物など多様な生物の生息が見られており、大きな魅力としてあげることができます。また、藻場は湾内全域に、干潟は湾奧部を中心として分布しています。さらに、他湾に比べ水深の深い湾であることから、多種の魚類が存在し、深海部には未知の生物の生息の可能性もあるなど、これらも魅力としてあげられます。
錦江湾は、北に細く切れ込んだ湾域を有していますが、他の湾に比べ、湾内への流入河川による負荷が少ないことなどから、汚染の度合いを示すCOD(化学的酸素要求量)でみると、三大湾の2分の1以下となっており、比較的良好な水質を保っていると言えます。
(参考)
・鹿児島湾ブルー計画